ETech07 - geek向けのWebベンチャー起業講座 / coder to co-founder
March 29, 2007 4:52 PM by toshi_i
研究員の石橋利真です。こんにちは。
ETech 初日午前中に行われたtutorial: coder to co-founderの内容まとめです。
目次
- 講演者
- 講演のテーマ
- 内容まとめ - 基礎編
- 内容まとめ - 人材編
- 内容まとめ - 資金編
- 内容まとめ - Webサービスを作る際のポイント
- 重要 - ビジネスは後からついてくる
- Marc Hedlund氏 推奨書籍
講演者
Marc Hedlund
元Webエンジニアのentrepreneur(起業家)。Web聡明記から幾つものstartup (Webベンチャー) を立ち上げつつ、1999-2003の間は Lucasfilm社でLucas Onlineの立ち上げ・総指揮を担当... と平行して Popular Power等の起業・運営に関わる。その後はO'Reilly社にてentrepreneur-in-residence(常駐起業家)なる立場で、同社のVC事業やO'Reilly Radarでの執筆等で活躍。2006年には新たなstarup - 個人の財務管理+Web2.0なサービス Wesabe - に情熱を燃やしている御方。
講演のテーマ
こんなサービスを作りたい...と熱い想いを抱いているエンジニアの為の、Sillicon Valleyにおける起業のTIPS・ノウハウ講座。
すでに業界で挑戦中の方々からすれば超入門的な内容なのかもしれませんが、僕にとっては、純粋に startup(ベンチャー企業) と vc(ベンチャー投資家) の関係とか、Sillicon Valley界隈の業界構造を垣間見る事ができた、充実した内容の講演でした。
内容まとめ - 基礎編
初めに
- 初期のアイディアは必ず間違っている。でも軸はずらさずに最後まで付き合っていこう、という姿勢が大切だよ
- visionary (先見の明をもった人、夢想家) である必要は無いよ
- アイディアに対する周りの意見には、良く耳を傾けた方がいいよ
- 役割 (CEO) を限定する事無く、やるべき事をこなしていこう
エンジニアリングだけじゃ無い
- マーケティング、営業、人的資源... ビジネスに必要な要素すべてを総括的に理解する必要があるよ
- そして会社運営とは、集まってくれた仲間に、自分の権限をどんどん委譲していく事でもある
起業する理由
- 自分や仲間が働きたいと思える環境を作りたい
- = 良い理由
- 金持ちになりたい
- = 悪い理由
金儲けがしたいならば、起業するのではなく、立ち上がったばかりのベンチャー企業にメンバーとして加わったほうが確率が高いよ。選別眼があれば、だいたい1/3の確率で大もうけできると思う。対して、自分で起業した場合の成功率は1/10位だよ。
アイディア重要
何よりアイディア力が大切。それも最初のアイディアをひねり出すだけではなく、brush-upの過程で常に別のアイディアを創出し続ける事ができないとね。
MBAは必須?
いんや。The Ten Day MBA - Steven Silbiger辺りの本を幾つか読んでおけばそれで充分。あるいはビジネススクールの短期講座(数週間)とか。
主観で考えられるテーマにすべし
自分が困っていること、欲しいサービス等をアイディアの種にすべし。自分がおおよそ関わり合いや関心の無いテーマは決して触れないこと!
※石橋コメント: この辺り、37signalsの書籍 - Getting Realでも同じ事をアピールしてますね。この考え方、とても好き。
とにかく色々な人の意見を聞こう
いろんな人に会って、自分のアイディアを共有してみよう。きっと、参考になる意見が山ほど返って来るよ。秘密を持つことなく、ありのままを伝えてみるべし - benefit of transparency。
その際、説明するだけじゃなくて、何らかのプロトタイプ/モックアップを作っておくとGOOD。見て触れるものがあると、人の理解は格段に上がるから。
今の時期は起業に適してないのでは?
2007年... 確かに業界の流れとしては悪いタイミング (Flickrも創業時かなり苦労したとか)。Techcrunch見ても判るとおり、新しいサービスは一日10個は出てきているからね。でも逆に、皆の(特に投資家の)期待値はとても高い状態にあるから、資金集めはしやすい時期でもあるよ。
心配事
- 競合は気にするな
- 誰が競合であろうと焦る・ヘコむ必要は無いよ。常に自分を信じること。同じアイディアを持った連中が必ずどこかにいるんだから。
- 助けてくれる人が居ない事も心配するな
- どうしても誰も居なかったら、僕 (Marc) が相談にのるよ(笑
アイディアをより質の高いものに
- 自分のニーズだけにフォーカスしないように
- 自分のニーズを軸に、できるだけ万人のニーズにも答えられるようなサービスを意識すべし。
- ユーザー層の姿が想像できるようになろう
- こういう人達に使って欲しい、という視点は大切。
- 誰かにアイディアの事を話してみよう
- そして反応を見てみよう。
- 自分と競い合ってみよう
- ライバル企業の視点で、自分のアイディアに対抗してみる。
内容まとめ - 人材編
co-founders 共同創業者
創業者の主な仕事は、従業員が拾いきれなかったタスクを一手に引き受けること。共同創業者がいる場合、これが大分楽になる。
共同創業は結婚と似ている。共に判断を決めていき、時には喧嘩もする。自分の経験でいうと共同創業者の人数は2-3人がベスト。
employees 従業員
初めから社員契約を結ばないように。期間限定の契約社員として来てもらって様子をみるべし。
気の合う仲間と働くのが一番
結局はそれが何よりも大切な事。もうひとつあるとすれば、君を気に入ってくれている人と働くのも、良い結果を導く秘訣だよ。
内容まとめ - 資金編
企業資金は、フェーズに分けると、会社立ち上げに必要な初期費用の確保 - bootstrap - と、日々の会社を運営する為の運転資金の確保 - investment - の2つがある、とのこと。
bootstrap 初期費用
まずは会社を立ち上げて、サービス/製品そのものを作り上げる必要があるよ。VC(投資家)に会いに行くのはその後。
この初期フェーズをこなすには2パターンの方法がある:
- moonlighting (夜なべする)
- 今の仕事を続けつつ、平日夜や週末にコツコツと準備をする
- consulting (受託開発で食いつなぐ)
- とりあえず会社を立ち上げて、受託開発で食いつなぎつつ、自社サービスを作り上げる
このどちらのパターンも、かなりしんどい道。
investment 資本投資を受ける
小口投資と大口投資の2パターンがある:
- 小口投資 - angels
- 小額投資を、大量の人から受ける。個々の保有シェアは低いから、企業の決定権を奪われることはまず無い。
- 大口投資 - venture capitalists (VC)
- 資本額の10%から多くて50%程の金額をドカッと投資してもらう。50%以上のシェアになる場合、彼らはいつでもキミをクビにできる権限を持つことになるよ(笑
VCを説得する際の秘訣
- 情報を隠さない、隠してない事を態度で示す
- 率直に話す
- その場を楽しんでもらえるよう配慮すること - be entertaining
- VCはサービスや製品に投資するのでは無い。あくまで周辺ビジネスに投資することを忘れずに。
- 彼らは8月の夏休みと、12月の年末休みは不在だよ
投資金額例 - Wesabeの場合
O'Reilly VC事業から $700,000 の投資を受けて、 8ヶ月で使い切った。用途は主にハードウェア購入と従業員の給与。
※石橋コメント: 金額は確かに聞き取れたものの、8ヶ月って期間がひょっとしたら間違っているかも...
内容まとめ - Webサービスを作る際のポイント
- まずはアイディアを煮詰めるべし
- 自分の中で筋が明確になるまで、じっくり考える。人から意見を貰う。アイディアを考え直す。その繰り返し。
- 広告マーケティング
- そこにお金をかけるべきじゃない。自分のブログで宣伝する、友達に使ってもらって、感想をブログに書いてもらう、などのバイラルが効果的。
- 手厚いユーザーサポートを
- 問い合わせてくるユーザーを大切に扱うべし。いつか必ず、それはプラス評価として自分に返って来るから。
- viral (クチコミ) による普及を狙う
- サービスに好感を持ったユーザーが、また別のユーザーを誘い込むような仕組みを用意しよう。また、web上のすべての感想コメント・感想ブログエントリに対して返信を出そう。これも必ず自分に返ってくるよ。
- benefit of transparency
- サービス周りのさまざまな情報を、常に透過的にユーザーにも伝えよう。信憑性のある情報の公開は、ユーザーに安心感を与えるから。
重要 - ビジネスは後からついてくる
基調講演で Tim O'Reilly氏も言っていた、Webベンチャービジネスの根幹思想:
hackersたちが、純粋に「楽しむ」行為こそが、新たなビジネスを作っていける
なんですが、今回のMarc氏の話をかぶせる事で、なんかSillicon Valleyのベンチャービジネス構造が理解できた気がします。
hackers達が、熱い想いでサービスを幾つも立ち上げている。
けれども、それらの中でビジネスまで繋がる確率は 1/10 (or less)。
でも投資家としては、10本に投資して、そのうち1本でも当たりが出れば、他で出た損失を補填して尚充分な利益を得られるので投資価値がある。
つまりは、
新たなWebサービスは、9/10がビジネスまで繋がらないのが前提認識。
でも1/10の成功に期待する投資家が多数居る事で、Sillicon Valley界隈のベンチャー業界が成り立っている。
1/10は高確率すぎ?Marc氏程の経験者で1/10レベルの話なので、人によってはさらに確率は低いのでしょうね。
これが当たり前の事なのか、それとも僕が変な熱にあてられているだけなのか。実情は、直接業界に居る方に聞いてみないと判りませんが、ひとつの視点を得られたという点で、今回の講演は充足感がありました。
※会場でお会いした日系VCの方にも、この手のお話を沢山していただきました。澤崎さんどうもありがとうございますー。今度はmountain viewで遊んでくださいませ。
Marc Hedlund氏 推奨書籍
tags:ETech2007
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こんにちは。客員研究員のマルコです。
石橋さん、わかりやすいレポートありがとう。
tutorialの紹介文
http://conferences.oreillynet.com/cs/et2007/view/e_sess/10493
このなかでentrepreneuingだけではなく、社内で新しいプロダクトを発案していく方法としてintrapreneuringって言葉ができていますが具体的な説明って何かありましたか?
March 31, 2007 6:04 PM by 匿名自分も会社を興した身であり、うんうんとうなずきながら拝見していました。
April 13, 2007 7:44 AM by 匿名シリコンバレーで梅田望夫さんにお会いした時も、
「楽しめ」「好きというベクトルが事業を前進させることができる」
とおっしゃっていました。
これからもこんなレポートお願いしますね♪